ゴールデンボンバーが高校生コスプレでコンドームの大切さを伝える寸劇をしたり、ぱいぱいでか美さんの「くわえゴムキャンペーン」だったり、コンドーム装着アニメソングを歌ったり…。
これだけ書くと一体何が何だかわかりませんが、これらは全て、男女がきちんと性を理解するためにジェクス株式会社が行なっている「ラブ活」という啓蒙活動。
「伝わらないと意味がない。メーカーにしかできないことがある」と語るのはジェクス株式会社マーケティング担当の井上さん。前回は女性向けコンドームについて聞きましたが、今回は「ゆりかごから老後まで性を身近に感じて欲しい」というジェクスが考える性教育についてです。
「コンドームを使いましょう」は伝わらない
女性が愛用するコンドームとして大ヒットした「グラマラスバタフライ」など、コンドームメーカーとしてのイメージが強いジェクス。しかし実際は「チュチュベビー」というベビー用品メーカーでもあります。
ーージェクスがベビー用品を取り扱っていることを知りませんでした。企業理念にリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)として幼少期から老人期までを含めた性をサポートしたいとありました。
ご存知ない方も多いんですが、弊社では、チュチュベビーというブランドで哺乳瓶を主としたベビー用品も取り扱っていて、ベビー用品とコンドームが二大事業です。
理念に関していうと、私たちはセックスをして出産するのに、なぜかセックスの性だけが切り離されています。とはいえ、当初は弊社もこの2つ、セクシャルヘルスとベビー用品カテゴリを切り離して動いていましたが、やはりそれはおかしいなと。
コンドームは薬事法でも定められた医療機器ですが、なぜかイヤラシイものだと思われています。なかなか難しい課題ですが、やはりセックスだけを切りはなすのではなく、きちんと融合させ、出産も含めた性を支援していきたいと思っています。
でも、それを伝えたいのに、リプロダクトヘルスって言われてもわからないですよね?こんなこと言ったら怒られるかもしれませんが、私はこういう言葉あまり好きじゃないんですよ(笑)一般的に普及していない言葉は相手に伝わりません。だからもっとわかりやすく伝えていかないといけない。
ーー伝え方を変える必要があるんですね。ゴールデンボンバーさんなどを起用した「ラブ活」などはかなりエンタメ要素が強いですよね。
そうですね。「ラブ活」はコンドームの啓蒙活動ですが、真正面から「コンドームを使いましょう」って言っても届けたい先の人はおもしろくないし賛同してくれない。だから、「コンドーム使いなさい」じゃなくて、「楽しく恋愛するための恋愛支援です」というような形にしたかったんです。
ゴールデンボンバーさんにご協力いただいたのも若い女性をコアターゲットにしながら幅広い年齢層に届けたかったからです。あとは、笑いを作れる方々というか、やはりコンドームを上手に扱える方ってそんなにいないんですよね。正直な話、私は一番届けたい若年層が見ている少年少女の漫画誌に広告出したいですけどね。
ーーやはり難しいですか。
少年誌は全部ダメですね。CMも同じです。CMで流すならコンドームのパッケージは映さず、コンドームだとわからないようにしてくださいと。もはや何のCMかわからなくなってしまいます。
そういう意味では生理用品はいい流れになりましたよね。私が知っている限りでは、ナプキンは隠れて買う表に出ない商品でしたが一気に変わりました。むしろ売り出し中の若い女優さんがCMに起用され爽やかなイメージになっています。
笑福亭鶴瓶さんが出演していたユニチャーム「ソフィ」のCM*は風潮を変えていったようにも感じます。生理用品のCMで鶴瓶さんがお月さんの顔をして出演していて。クスッと笑える内容で、タブー感は一切ないんですよね。コンドームも同じで、恥ずかしいものから一般的なものにしていきたいんですよね。
*1985年にユニチャーム「ソフィ」が笑福亭鶴瓶氏を起用したCMでは、月に扮した鶴瓶が「トントントン、お月さんです。一応決まりですから」と女性の部屋の窓から顔をだす。しかし女性がソフィを机に置くと月は瞬間的に姿を消す(瞬間吸収)。月は消える際に「ほな、また来月ねー」と消えていくコミカルなものだった。
エロと教育の狭間を目指す
ーー様々なキャンペーンをされていますが、反響が大きかったものを教えてください。
コンドーム装着アニメ「ラブ活☆はあときゅるり」ですかね。アニメのオープニングをイメージして作った動画なんですが、広告も打っていないのに気づいたら150万再生になっていました。
コンドームのつけ方や注意点を説明している動画なんですが、どうすれば若い人たちに正しい啓発ができるかなと考えたら、やっぱり性教育は面白くないとダメだなと思ってアニメにしました。歌詞にコンドームの使い方とか注意点を全部詰め込みました。
コンドーム装着動画 「ラブ活☆はあときゅるり」
学校で教える内容にはやっぱり限界があるんですよね。コンドームが大事だとは伝えるけれど、それ以外のことは教えません。ゴムの装着タイミングやマスターベーションについてもそう。学校では病気があるからセックスはするなからはじまり、でも、あなたはもう大人なので子供を産んでくださいと言われても、一体どうすればいいんだとなりますよね。
ーーセックスから出産までの間が全部抜けているんですね。
はい。だから、その間を埋めるのがメーカーの役割だと思っています。個人的にはエロと教育の狭間を目指したいなと思っています。
ネットにはエロしか出てこない、かたや学校や病院になると教育しか出てこない。教育はおもしろくないし、エロは信じられない。そうなると信頼できることを真正面に面白く言えるのはメーカーくらいだと思うんです。正しい情報を伝えなければいけない責任もありますからね。
ーーグラマラスバタフライコンドームを教育機関にサンプル提供していますよね。
教育従事者の方も性教育に関しては単にマニュアルを伝えているだけのことも多いです。でもコンドームは実際に現物を見て学ばないと頭だけでの理解は難しいです。AVでもコンドームの装着風景は映りません。私も小学生の頃は姉の机の上に置いてあった指サックをコンドームだと思っていましたからね(笑)
だからこそ学校の先生にきちんと使い方を伝えて、それを子供達に伝えてもらいたいと考えています。例えばゴムの素材、ポリウレタンとラテックスの違いや、正しい装着方法など具体的な説明をしています。その知識とともにサンプルを配布してもらえれば、子供達が実際にコンドームを使う年齢になった時に安心して選んでもらえるメーカーになると思っています。
先生から生徒のフィードバックももらっていますが、やはりコンドームの装着法を間違えている子が多いです。ゴムを隅っこに寄せてから個装袋を開けていなかったり、ゴムを裏表間違えていたり、勃起する前に装着したり。ペニスにシワがあるままつけてしまっていると、勃起してシワが伸びることで装着しているゴムにテンションがかかって破れやすくなるんです。あとペニスの根本によせるとかもマニュアルには載っていないですからね。
ーー最後に今後の展望を教えてください。
個人的には秋葉原とかで店舗も含めて一緒にコンドームの啓蒙イベントをしたいですね。すでに行われている啓蒙イベントは、どうしても変な冷やかしが入らないように教育従事者や専門家のためのイベントやクローズドのものが多いのですが、届けたい人たちに直接届けられるようにオープンなイベントもしていきたいです。
あとは、やはり性は常に人生に寄り添うものなので、弊社としてはコンドームとベビー用品を融合して、性を切り離さずにきちんと発信していきたいですね。
ーージェクスさんありがとうございました。
こんなに大切なものなのに、なぜかイヤラシイものだと思われてしまうコンドーム。性教育もそう。そろそろ、セックスの性だけを切り出さず、ライフプラン上の大事な役割として点ではなく線で考える必要がある。だけど真正面から伝えるだけじゃ伝わらない。やっぱり私たちには、つい口にしたくなる楽しさも必要なのかもしれません。