かっこいい雑誌を見つけてしまいました。
雑誌の名前は「ぶ -江戸かぶく現代−」
中目黒の着物屋KAPUKIがプロデュースした、現代のかぶくアーティストにフォーカスした雑誌。 とにかく本当にかっこいいので、まずはコレを見てください。
これ全部ボールペンで描いてます…!
表紙と裏表紙はボールペンでイラストを描きあげる画家SHOHEIさんの作品。侍や芸者をモチーフとした作品は国内外で注目されています。ちなみに、SHOHEIさんは「AKIRA」の作者である大友克洋さんのご子息です。
茶道ってこんなカッコよかったっけ…?
「お茶ってNOがないんだよ」
茶人・松村宗亮氏との対談ページでは、既存のフォーマットの中で、どれだけ相手を驚かすことができるか?というヒップホップなお茶の捉え方を5つの茶会で表現。
こんな茶会あるなら行ってみたい!
秋元梢さんディレクション!夏木マリさん、シシドカフカさんも参加って豪華すぎる
秋元梢さん
浮世絵現代と称した特集では、モデルの秋元梢さんがファッションデレクションをつとめ、夏木マリさんやシシド・カフカさん、義足モデルのGIMICOさんらを撮りおろしています。
シシドカフカさん
GIMICOさん
はぁ…本当にかっこいい…。
夏木マリさん
こんなページもあるよ。
空飛ぶバイオレンスツインテールぶっ壊して造ってくっつけて
読み物ページでは江戸の浮世絵師・菱川師宣の特集も。
一体なんなのこの雑誌…。
ということで、「ぶ」の編集長である腰塚光晃さんと着物屋KAPUKI店主のレイコさんを訪ねてみることに。
世界で初めてモードを作ったのは日本!?
ファッションや音楽業界などで写真や映像制作に携わっていた光晃さんは、2013年に着物ブランド「Elly&Oby」を立ち上げ、4年前に妻であるレイコさんと着物屋KAPUKIをオープン。
「江戸のつづき」をコンセプトにしたKAPUKIがきっかけで、二人は江戸時代の価値観やユーモアに惹かれていったそう。
テクノロジーが過度に進化し続ける今の時代にこそ、江戸の遊び心を日本人である私たちが知るべきじゃないのか?
光晃さんは、この遊び心を、ウェブではなくココでしか読めない雑誌というカタチで表現したいと考え、江戸カルチャー雑誌「ぶ」を立ち上げた。
「ぶ」で伝えたいこととは何なのか?
「世界から見ても日本文化はかなり特別で、江戸時代は世界一だったと言っても過言じゃないと思います」光晃さんは話はじめた。
着物で言うなら、17世紀の段階で、色使いやアシンメトリーで大胆な絵柄を衣服に再現しているのは世界で見ても日本だけ。モード(流行)も1600年には存在していて、「小袖雛形本」という今でいうファッション雑誌があり、ヨーロッパより100年以上も早く流行のサイクルを認識していた。
でも、私たちはその事実をほとんど知らない。むしろ海外の人たちがそれを見つけてくれる。
「インターネットで誰もが発信できるようになり、経済的なことだけではなく、価値観も含め個人の貧富の差がさらに激しくなったように感じます。だけど過度に進んだものは揺り戻される。それが今じゃないかなと思うんです。カセットテープやレコードなんかもそう」
「このタイミングに利益や利便性だけじゃない江戸のかぶく精神を知ってもらうことで、違うものが見えてくると思う」
テキストに縛られず、心が動く選択をする
かぶき者。戦国から江戸時代にかけて、常識はずれな奇抜な行動や格好をする人たちをそう呼んだ。つまり、かぶくとは「普通ではない。異端を恐れずに時代の先端を行く」ということ。
そのためには常に多数のスタンダードな意見の外側に身を置いておく必要がある。
インターネットによる情報伝達で、新しく面白いものが見つかりやすくなる一方、消費スピードも早く、気づけば模倣されスタンダード化されていく。 その流れを俯瞰的にみて、自分の軸を基準に外側にいつづけることが”粋(イキ)”であり、かぶくということ。
なんだか、わかるようで、わからない…。そもそも自分の軸はどうやって見つけるのか?
「江戸ってね、一人遊びがすごく上手だったと思う。今みたいに簡単に情報にアクセスできないから、自分の感覚の中で面白みを見つけるんだよね」
「だから、結果的に、みんなが行くから行くんじゃなくて、自分で見つけるしかない。逆に今はそれが難しい時代だよね。でも、自分の心が楽しくなる選択をしてみることからはじめるしかない」
「インスタ映えだからとかそういうことじゃなくて、自分がそれをやったら超個人的に楽しそうだなってことに進む。あと、そもそも自分の軸ってテキスト化する必要はないからね」
確かに、インスタやブログだったりアウトプットから考えて行動したり、誰かのために動く方が動きやすいことも…。
隣で話を聞いていたレイコさんが笑った。
「あはは。そうよね、難しいわよね。私だって自分の軸なんてわからないわ(笑)でも、誰かのために行動できるなら、もっと素敵よ!それができない人だって多いんだから」
ファッションからはじめてみたっていい
そう笑うレイコさんだが、KAPUKIの着物を着こなすレイコさんはどう見ても自分の軸を持っているように見える。
「この着物っておはしょりがないんです。帯もベルトタイプだから巻くだけ。着付けって大変って思われてるけど、これならすぐ着れるでしょ?」
KAPUKIが取り扱う着物には、おはしょりが無い着物やデニム素材の着物もある。 おはしょりとは、着物を着る際に着丈に合わせて、たくし上げた部分のこと。
今では女性の着物にあるのが一般的なおはしょりだが、おはしょりが定着したのは明治以降の話。 明治時代に生活様式が変わり、女性が外に出る際に裾が邪魔にならないよう着物をたくしあげ、不便なく着れるカタチとしておはしょりが定着した。
時代に沿って変化してきた着物。だったら、今に適した着付けもあるのでは。
伝統を守りながらも、着物を楽しみたい人が自由に着方を選べばいい。ファッションからでもいい。自分が心地よい物やスタイルを選ぶだけで自分自身も変わってくるのかもしれない。
KAPUKIオリジナルのデニム着物
最後に光晃さんは「価値観の転換を企てたい」と語った。
世界が誇れる文化を持っている日本人。伝統に縛られるということではなく、江戸の粋を知ることで、今の時代だからできる伝統が生まれるのではないか? 今をかぶく日本人を応援していきたい。
それはきっと特別な、希有な人たちに向けた言葉ではない。
「ぶ」の巻末には、光晃さんが尊敬する方からかけられた言葉が綴られている。
「かぶくことに、正解、不正解はありません。どうぞかぶき続けてください」
目の前の風景や感情をテキストや画像に留めたり、流れてくるそれらの情報に行動を閉じ込められてしまいがちな私たち。 そこには新しい発見もあるけれど、たまにはディスプレイを閉じてみるのもいいのかもしれない。
テキストにできない自分の軸を知るために。
「さあ、粋にかぶき続けましょう」
新・和文化雑誌『ぶ -江戸かぶく現代-』
https://www.amazon.co.jp/dp/4775527592/
【着物屋 KAPUKI】
所在地:東京都目黒区青葉台1-25-3
TEL: 03-5724-3779
営業時間:12:00~19:00 水曜日定休
http://kapuki.jp/