どうして日本人はセックスレスになるの?フランスで聞いてみた

子供が性器に興味を持ちはじめたらどうする…?exsensのナタリーさんに聞きました。

日本人=セックスレス。そんなイメージが定着しつつある。

セックスが全てではないけれど、やっぱり触れ合いたい…そう思う人も少なくない。

「お互いを高めあう知識を広げれば、セックスレスを防ぐこともできる」

そう語るのは、フランスでカップル向けのマッサージオイルなどを展開する「exsens」のナタリーさん。セックスに対する価値観について聞いた。

exsens」が誕生したのは4年前。exsensはカップル向けコスメティクスで、ベッドの上で互いにマッサージしあえるオイルなどを開発、販売している。パートナーとマッサージをし合ったり、互いに触れ合うことでより良いセックスライフを楽しめる商品だ。

商品は自社工場で原料から作っているとのこと。ヨーロッパの医療基準・コスメ基準・フード基準もクリアし、オーガニックなオイルは舐めても大丈夫。ドライオイルなどはセクシャル時以外にも使用できる。

左:マッサージオイル 琥珀&ホホバ
右:塗ったところに息を吹きかけると熱くなるオイル「HOT VANILLA ESPRESSOフレーバー」

子供が性器を触り始めたら、どうする?

ーーー「exsens」は女性も手に取りやすいデザインですよね。パリのラブグッズを取り扱う店舗も女性も入りやすい雰囲気で素敵でした。

フランスではセクシャルなことは嬉しく楽しいこと。皆、楽しめる商品を探しているのでラブグッズにもポジティブな反応が来ます。

私たちの会社は女性が多いので、女性目線で商品を作っています。でも、これらは女性のためだけじゃなく、パートナーを思いやるための商品。

ヨーロッパは個人主義でどうしても自分のことが一番になりがちです。今はアダルトビデオやセックストイも、自分一人のためのものが多い。でも、喜びや快感を広げるには、自分だけじゃなく相手が必要だと思っています。

ーーー フランスは性に関して話すこと自体がオープンなイメージです。子供の頃からの教育なのでしょうか?

私は、9歳の娘と5歳の息子がいますが、子供の好奇心を摘まないようにしました。そして、自分の体について知ることが大事です。

娘は4歳で自分の性器に興味を持ちはじめましたが、小児科の先生にも相談し、止めるのではなく、触わせた上で自分がどうなるかを経験させました。

性器に興味を持つことは悪いことではありません。やらせた上で、あなたの体はあなただけのものだとしっかり教えます。

子供だろうと、彼女の体や人生は彼女のもの。大人が勝手に見てはいけません。性器を触りたそうにしていたら、「あなただけの体だから、ドアを閉めてあなただけの空間でしなさい」と教えます。

決してタブー化してはいけません。大きくなると恥ずかしさで怖がってしまうこともある。子供の頃から伝えることが大事です。

ーーー なるほど。日本に比べると病院との距離も近いように感じます。

小さい頃に婦人科にかかることはないですが、精神科や心理科にはよくかかっています。その際も、子供には子供の事情があるので、親が予約して連れて行っても、診察室には入らないケースも多いです。

娘が9歳の時、クラスメイトと問題があった際も私の言うことは「そうじゃない!」と聞きませんでしたが、心理科の先生との対話で全て解決しました。医師も私には、この年代でよくある誤解と説明するだけで細かくは伝えません。

12歳の親戚の子も、自分に自信が持てず自分から話せなかったが、心理科へ1年通い続け克服しました。

親が全てできるわけではないし、解決しないこともある。だからこそ第三者が後押ししてくれるシステムが大事です。子供にとっても自ら専門家に相談し、真剣に回答しててくれる存在は大きい。どうしても親は主観や感情が入るので第三者の視点は必要ですよね。

行為は突然じゃない。セックスまでの過程を楽しんで

ーーー exsensの商品もですが、性やセックスを楽しむことの大切さを感じます。どうすれば互いに楽しめますか?

お互いの快感を生み出すメカニズムは色々ありますが、私はロシアで快感を知るための教室に行きました。

彼のマスターベーションを、ただ上下の動きだけじゃなく、どこをどれくらい撫でるといいか、オーラルセックスの時はどうしたらいいか、このタイミングでやめたら何故ダメかというテクニックを教えてもらいました。

お互いが高めあう知識を広げることで、セックスレスを防ぐこともできる。でも何よりお互いが語り合う必要があります。

ーーー 性の話をするタブー感をなくすことですよね。

ある日突然タブーがなくなることはありません。時間をかけ、話し学び合うしかないです。

生きて行く上で、何が自分を前に進ませてくれるかというと「喜び」です。セックスに限らず、食べることもそう。美味しそうな食べ物を見て、これから食べる楽しみと、すごく綺麗な下着を着て、これからセックスをする楽しみや喜びの感覚は同じ。私たちには喜びが大事だということを共有し学ぶことです。

ーーー 喜びの感覚…それを見つける必要があるんですね。

例えば、私の場合は、夫と今夜セックスをしたいと思ったら、昼からどうやって導くかシナリオを作るのが好きです。お風呂に入ってシャンパンなのか、レストランにいくのかを考えると、自分自身の要求が研ぎ澄まされていきます。

セックスという行為を突然するのではなく、時間をかけてそこまで持って行くことが大事です。人にもよりますが、受け身でいるだけじゃなく、自ら物事を起こすと自分が流れを作れます。

だから、こういうオイルで相手を喜ばせたり、びっくりさせたり。相手が何を求めているかを考えてみる。自分がどういう格好をしたら喜ぶか、どういうジェスチャーをしたら喜ぶかをカップル同士で教えあい学ぶプロセスが本当の喜びです。

そのためにも若い頃に自分の体について学んでおくことが大事です。自分の体を知らなければ何も得られません。

ナタリーさん

セックスレスは家庭に緊張感が生まれる?

ーーー 日本は結婚後のセックスレスも多いです。

私からすれば互いに何も求めていない状態になったら別れるという単純な話です。本当に他人みたいになるなら、別の人生を作ればいい。

ただ、そう思えるのは自分が自由の身であるということを知っているからかもしれませんね。ところで、同じ空間にいるのに性的関係がないなんて、家の中が張り詰めてしまうんじゃないですか?家庭は大丈夫なんですか?性的関係がなくなった両親がいると子供ともうまくいかなくなる印象です。

ーーー 家庭によりますが、セックスレスだから家庭に緊張感があるという話はあまり聞いたことがないです。日本だと、両親が性的な関係にあることを知りたくない子もいます。

そうなんですね。個人的な意見ですが、うまくいっている家族は女性が一つにまとめる役割を担っていることが多いです。動物的な意味でも、男性は精子をばらまく役割で、一つの場所に留まることが難しい。

だからこそ、女性は無理をしちゃいけないけれど、自分自身の喜びを軸に家族を一つにまとめれるといい。女性たちが諦めてしまったら、彼らはどこかに行くこともある。

仕事をして、子供を寝かせ、女性の一日の最後は本当に疲れています。だから女性として疲れていない状態で彼と向き合う必要があります。あえてお互い朝や昼に休みをとって二人だけの時間をつくったり、週末だったり元気な時間が必要です。お互いに話し合い、元気な時間を見つける努力がとても大事ですよね。

ーーー まず夫婦がお互いのために努力する。

それは子供にとっても大事なことです。子供の前でセックスはしませんが、相手を抱きしめてキスをする。すると子供たちも一緒に入れてとハグをしてくる。子供に愛を感じさせる機会でもあります。親は冷たい関係じゃなく、いつもカップルなんです。

ーーー 男性だけでなく、女性も外に性的な相手を求めることもあります。

仮にセックスレスだからと外で性的な繋がりを求めても、本当に求めていたものは得られないのでは?夫に不満があって、別の人と恋に堕ちてしまうなら話は別ですが、単に性的な欲求だけなら夫とできることです。

ここ15年ほどフランスでは夫婦が別れてくっついてを繰り返しています。毎回子供も作っている人もいます。彼らを見ていて思うのは、くっついてみて、この人じゃないと別れる。そして新しい人とくっついてみて、それも違ったと別れる。

根本的にうまくいかないこともあると思いますが、もしかしたら相手に求めてばかりで、自分は何も努力をしていなかったケースも多いんじゃないかなと。より良い関係を作るためには、相手を考え自分が行動しなければ相手も行動しません。こういう商品で二人で一緒にできることが色々あると感じてもらいたい。

ーーー 相手を考えて、二人で楽しむ。単純なようで、なかなか難しい。

実は私も昔は違ったんですよ。20年前にウクライナからフランスに来ましたが、ウクライナは日本と少し似ています。結婚するまでは仲がいいけど、結婚したら男性は家にお金入れて外で生き、女性が子供を育てます。だけどフランスに来て、自分の価値観を変える必要があった。

セックスに関しても、男性から女性へのオーラルセックスなんてウクライナではあり得なかった。でも今の夫と出会い、最初はやめて!と思ったけれど、時間とともに変わった。時間をかけて少しずつ変わっていくしかないです。

ーーー ナタリーさんから見て、日本のセックスレスの原因は何だと思います?

何が原因かは難しいですが、日本人は仕事がとても忙しいイメージです。仕事で常にプレッシャーを感じ緊張状態で、家に帰って来た頃には疲れている。その状態じゃ、帰ってきて相手に優しくなんてできません。社会的な問題ですね。

ただ本当にセックスを求めているなら、自分からの働きかけは必要です。もちろん、フランスにも社会問題やプレッシャーはいっぱいあります。でも、個人的にはセックスには、そういうストレスから解放してくれる役割もあると思っています。

昔、母が「カップルで一番大切なのは、いいセックスをすることだ」と言っていて、当時は違うと思っていましたが、今は納得できます。子供や仕事の問題があっても、夫婦が性的な良い関係であることで日常的な問題が問題じゃなくなることもあります。

ーーー マスターベーションよりセックス?

一人でマスターベーションをする時間ももちろん大事です。でも、一人で完結しちゃうだけより、二人だともっと喜びが広がります。両方必要ですね。

フランスでコスメのCMを見ていても、若くて綺麗な女性が「全ては自分のため」と発信しています。でも、私たちは必ず「誰かのためにもなる。その先には一緒に共有する人がいる」というメッセージを伝えるようにしています。自分のためだけの綺麗もいいけれど、やっぱり私たちには他者を含めた上での幸せがあると思っています。

ーーー ありがとうございました。

社会や他者に合わせるのではなく、自分らしく生きることを考えはじめた私たち。一方、フランスに住むナタリーさんの話からは、常に自分主体を求め続けることへの危惧も感じた。

真逆の価値観のようにも感じる「他者」と「私」。だけど、どちらが欠けても私たちは満足できない。

セックスもそう。片方を擦り減らすのではなく、互いの求めるものを共有しあい、両輪を回し続けることこそが、本当に求める場所へ行ける方法なのかもしれない。

って、テキストで書くのは簡単だけど実際は難しい部分もある。だからまずは子供に戻ったつもりで、自分の喜び、そして自分の体を知ることからはじめてみてもいい。

あとはそう、忙しいを言い訳にせず、しっかり休む時間を作ることも忘れずに♡

取材・文:西本美沙 通訳:Mai Ono

 

日本での婚活をやめた。フランスには自分らしさという孤独があった。