いつからエロは汚らわしくなった?東京女子エロ画祭に見る女性主体のエロスとは

男女の役割固定がなくなれば、男女の関係はもっと楽しく、おもしろくなる

「いつからエロという言葉が汚らわしいものになってしまったのか」

3月上旬に開催された「東京女子エロ画祭」で主催者のひとり、神田つばきさんはこう語った。

今回で5回目の開催となる東京女子エロ画祭は、ライター神田つばきさん、映像監督の安藤ボンさん、グラフィックデザイナーのもも小春さんが主催する「女性が考えるエロス」をテーマとしたアートコンペティションだ。自分に潜むエロスを表現した作品を女性限定で募集し、今回は100作品にせまる応募があったという。

イベント当日は、特別審査員として美術家の柴田英里さんも出演。ノミネートされた全11作品を上映後、来場者による投票で大賞作品が決められた。

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そもそも、エロスとは何なのか?神田さんは「エロスは”肯定”」だと言う。

「性の営みによって違う体をもつ他者の肉体と連繋することも肯定、自分には理解できない性別や性愛のあり方を持った人を否定しないことも肯定です。

たとえばいつも強いと思っていた男性が、急に自分の弱みを打ち明ける、そんな瞬間にもエロスを感じます。性愛にこだわらず、他人との距離がぐっと近づき、境界線が揺らいで消えかけ、気持ちが一つになるときって興奮しますよね」

筆者は過去にも同イベントに参加したことがあるが、写真、イラスト、アニメーション、映像などの表現手法もだが、エロスの捉え方にも変化と幅が出ていたように感じた。エロスを外見ではなく女性の内面に投影した作品が多く、いい意味でサブカル臭が薄れ、女性がうなずける作品が多かった。

29103576_1603249613086457_3727841951467175936_o提供:東京女子エロ画祭

「”エロスを探る”というテーマで作品を作ることで、自身の内側がより深く見えたということでしょうか。前回までは、エロを享受しているのは男性で、私たちはその男性たちをこう見ているというクリティカルな視線をもった作品に票が集まる傾向がありました。今回は、そういった前置きなしにズバッと自身を切り開いて見せるような作品が揃い、私たち審査員も同じ女性として、自分自身を解剖されたような新鮮な体験でした」(神田さん)

今回大賞を受賞したのは、マキエマキさんの「自撮りカレンダー熟女」だ。プロカメラマンである彼女が、50歳を過ぎ、自分の中の女が枯れ切る前にカタチに残しておきたいと、自分をあえてエロく撮影したセルフポートレートだ。ハツラツとした彼女の話を聞きながら作品を見ると、最高にハッピーになる作品だった。

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提供:マキエマキ

マキエさんは閉経がきっかけで、女が終わることへの寂しさを感じた。だったら、それを残したいと自撮りをはじめたが、作品を撮ることで「歳をとるとセックスもできなくなるかもしれないと不安だったが、歳をとってもエッチでいていいんだ」と内面にも変化が生まれたという。

彼女の作品は一見すると、男性が喜びそうなピンナップ写真にも見えるが、そこには誰でもない彼女自身の楽しさが溢れていた。

「これはフェミニズム・セルフポートレートの新しい一幕なんではないかと、ドキドキしました」(柴田さん)、「マキエさんは、男性目線の作品をあえて意識して作っている。これでどうだ!という思いが伝わる」(安藤さん)、「歳を重ねることから逃げずに向き合っているのが本当に素晴らしい」(神田さん)

*ランドリーガールではマキエマキさんのインタビューを公開予定です。

そして、審査員特別賞を受賞したのが、ふじたゆいさんの「巡る」だ。女性が愛を知った時の暖かさ、孤独を知った時の虚しさを30秒ほどのループアニメーションで表現した。美しい線で描かれた女性と、感情を表現した淡い色彩が、水音に合わせてループする。その揺らぎの柔らかさと心地よさに、気づけばふと引き込まれてしまう作品だった。

29100981_1603249526419799_3993610589258645504_o提供:東京女子エロ画祭

「自分の体に触れることで、あの時あんなことあったなと思い出すことがある。そんな女性の感情が表現されていた」(神田さん)

他にも、母と女の境界線を表現した映像作品や、食用の鶏の死骸を素描することで生と性を描いた作品、好きだけど嫌いという女の子の感情をわき毛を剃るという行為で表現したアニメーションなど幅広い作品がノミネートされた。

イベント終盤、主催である安藤さんと神田さんはこう語った。

「あなたにとってエロスとは何か?を改めて考えるきっかけになっていけばいいと思います」(安藤さん)

「イベントを開催するにあたって、またエロかとも言われました。いつからエロという言葉が汚らわしいものになってしまったのか。このイベントは女性が傷つかない、消費されないエロスとは何かを考えて始めました。女性もエロスを楽しめるようになればいいと思います」(神田さん)

そして、東京女子エロ画祭を続けることで「男女の分断を食い止め、わかり合う第一歩になればいい」と言う。自身の内面を表現した彼女たちの作品が「男性は性を消費する側、女性は提供する側という役割固定から解放されれば、男女の関係はもっと楽しく、おもしろくなる」未来図になっているのかもしれない。

29136410_1603249583086460_7430302076439101440_o提供:東京女子エロ画祭

女性の日常や内面に潜むエロスを垣間みることができた本イベント。何にエロスを感じるかは人それぞれだが、これまで女性が消費されがちであったエロの世界において、女性自身も主役となり参加できるエロスの形が増えていくことを今後も期待したい。

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