閉経が怖かった。52歳、自撮り熟女のヌードが賞賛されるワケ

閉経した。女が終わるようで寂しかった。でも、今すごく幸せだ。
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濡れにくくなった。女が終わると感じた。

マキエマキ、52歳。通称、自撮り熟女。時に下着姿で、時にホタテの貝殻水着でセルフポートレートを撮影している。

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提供:マキエマキ

彼女の作品は男性目線のピンク映画のようだが、見ての通り、非常に写真がうまい。それもそのはず、彼女はプロカメラマンだ。

普段はプロカメラマンとして商業写真を撮る彼女が自撮りに目覚めたのは3年前。きっかけは、イベントで着用したセーラー服姿を冗談でフェイスブックに投稿したこと。

「脚の綺麗なモデルだね」などフェイスブックについたコメントを見て「あれ、私もしかして、まだいけるんじゃない?」と楽しくなった。

そう感じた時には、三脚とライト、撮影機材を一式持って撮影場所に向かっていた。自撮りと言えど、写真は写真。中途半端な撮影はしないのが彼女のスタイルだ。

27年のカメラマン人生を送っている彼女だが、「写真を撮るのは好きじゃない。みんな仕事でもないのになんで撮影するんだろう」と仕事以外での作品撮りはしたことがなかった。

最近のエロは笑えない。オチがない写真は撮らない

そんな彼女が自撮りをする理由は「エロを表現してみたかった」からだ。そして閉経が近づくにつれて「女性性がなくなることへの寂しさを感じ、女性としての姿を残しておきたかった」から。

calendarjyukujyo5提供:マキエマキ

彼女が作品を撮影する上で一番大事にしていることが”笑い”だ。「オチがないものは撮らない」。

子供の頃から、ピンク映画のポスターや橋の下に落ちていたエロ本に興味があった。これまでは、自分の中にあるエロの表現をアウトプットする機会がなかった。でも自分を被写体にすればやりたい放題。誰かに文句も言われることもない。彼女は自分自身をエロの対象物として撮影を始めた。

エロ好きな彼女だが、最近のAVなどには嫌悪感を感じることもあるという。

「昔のエロはくだらなくも笑えた。最近のAVやエロは単にやりたいだけで全然笑えない」

撮影シーンは、いつも突然思いつく。それから、念入りにロケハンをして撮影に挑む。話を聞いているだけでも、単なる自撮りではないことがわかる。一番時間を要した作品は構想から2年かかった。そこまで時間がかかった理由は「しっくりくるフンドシが見つからなかった」からだ。

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痛いオバハンと思われるだけ

彼女が写真を公開すると、男女を問わず反応が返ってくる。男性は「完全にエロ目線」だが、それ以上に女性からの反響が大きいという。一見すると彼女の作品は男性向けのエログラビア。女性は嫌悪感を抱くかと思いきや、20〜50代の女性から、かっこいい、憧れる、といったコメントが寄せられる。

「痛いオバハンと思われるだけだと思っていたので想定外でした(笑)50代と年齢を公開しているので、それを見ての反響なのかもしれません」

そして、作品を通して彼女自身も変わった。他人に見られることで、「外見に自信が持て、自撮りを始める前と比べると自分の顔が様変わりした」そして「歳を取ってもエッチでいていいんだ」という自信ももてた。

img_1727提供:マキエマキ

切り離してきた”女性”を弔う

女性を謳歌する。そんな言葉がしっくりくる作品だが、彼女にとって自撮りは、「封じ込めてきた女性性への弔い」だとも言う。

カメラマン業界は男社会。彼女はプロカメラマンになってから女性性を切り離してきた。彼女がカメラマンを始めた当時は、女性カメラマンも少なく「女なんかに写真が撮れんのかよ」と言われることもあった。

そんな中でも「女性のカメラマンでよかったと言われるような仕事をしていこう」と決意したが、それは「内面的な女性性をバッサリ切らないとできない」ことだった。「女性性を切った上で、女性ならではのことをしよう」彼女は女性であることを極力出さずに仕事を続けた。今でも仕事のスタンスは変わらない。

女性らしさを閉じ込めてきたため、彼女の自撮り写真を見て同業界の人からは「マキエさんはどこに向かうの」「何やってるんですか?」と驚きの声が絶えなかった。中には距離が生まれた人もいる。

「女性性を消そうとしてきた。それは、むしろ、女性であることをすごく意識してきたということ」

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そして閉経。濡れにくい。女を残したい…!

彼女は作品のイメージ通り、非常にオープンだ。あっけらかんと話して、屈託なく笑う。作品を通じて女性に伝えたいことを聞くと、最近は、女性であることのしんどさを伝える人も多いが「もっと女性を楽しんでほしい」と言う。

自分自身を知り、楽しむこと。その一つがエロであり、セックスだ。「自分のエロをもっと楽しんで欲しい。楽しまないなんてもったいない」多くの女性はセックスを楽しめているのか?

「自分のセックスと向き合い解凍する必要がある。自分はいやらしい女だと認める。いやらしいことは悪くない、楽しいこと」

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彼女は、いつからそこまで女性性を出せるようになったのか?子供の頃からエロに関心もあったしオープンな気質ではあったが、表に出せるようになったのには「生物的に子供が産めない状態になった」ことも影響していると言う。

「できないものに未練を持っても仕方ない。子供が産めなくなって、楽に女性性を出せるようになった」

もう一つの転機が閉経だ。生理は女性であることの象徴でもある。自撮りをはじめた時はかろうじて生理はあったが出血量は減っていた。そして閉経とともに、セックス時に潤滑剤の役割をはたすバルトリン腺液にも問題が生じたのだ。「で、出ない!出にくい……!!」濡れにくくなった。

「女が終わる。自分の姿を残したい」彼女はシャッターを切っている。

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20代のセックスなんてセックスじゃなかった

結果的に、年齢とともに肉体的な性欲の高まりは減り、オナニーの回数も減った。ただ、不思議なことに、セックス時の感度の高まりは強く深くなっていった。「今思えば20代のセックスなんてエクスタシーじゃなかった。穴を貸してるだけだった」と彼女はいう。

そして、今感じる深いエクスタシーをこう表現する。「柔らかい泥の沼にぽちゃーんって落ちる感じ。ぬるい沼でしばらく漂った後、最後に崖があって、ん、ぎゃーーーーって落ちる感じ」だそうだ。

それは、歳を重ね、体を重ねる相手が本質的に自分を求めているかがわかるようになったことも影響している。いくつになっても女性として求められることを自分が全力で楽しむ。逆に「お前もこんな感じだろ」と接してくる相手とは沼まで行けず水辺で遊ぶだけのセックスでしかない。

「女性であることを認めた上で、女性だからできること、男性にはできないことが山ほどある。無理強いはしないが、せっかく女性に生まれたんだから女性であることを楽しんだ方がいい」

最後に1つ。彼女の撮影に多大なる貢献をしている人がいる。夫だ。彼女のほとんどの撮影に同行している彼は、バミリ担当だ。プロカメラマンである彼女は自撮りといえど、撮影前に試し撮りをする。カメラの知識や技術がない夫ができる仕事はモデルだけだ。

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夫はテストショットモデルの他に、上記のようなデザインも担当しているそうだ。

彼をモデルにフレーミングを決め、ピントと露出を調整する。最近では撮影にも慣れてきて、彼女の衣装のヨレをなおすこともあるという。「本当に良い旦那です」そう笑いながら、彼女はこう続けた。

「私の作品は、女がどうとか、フェミニズムアートとか高尚なものじゃありません。単に、『何やってんの、この人』って笑ってもらえればいいんです」

 

「今、人生を謳歌しています。52年生きてきて、今が最高潮です」

calendarjyukujyo12提供:マキエマキ