レズビアンって別に耽美じゃないよ?セックスレスの悩みも同じだよ。

レズビアンカップルの描かれ方はどうやらちょっと違うらしい。
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女性同士で愛し合うレズビアン。漫画や映像で目にするレズビアンは純潔で気高くて、プラトニックで、でもどこか官能的。

「よく言われますが、そんなことありません。レズビアンの本質を描いた漫画や映像って少ないんです。」

レズビアン向けラブグッズ『fantastick』を開発したラブグッズメーカー リグレジャパンの山口敦子さんは、世の中のレズビアンのイメージは現実とは異なるといいます。

 

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10年かけて山口さんが開発したレズビアン向けラブグッズ『fantastick』。制作秘話はコチラから。

 

同じ体でもわからない。レズビアンもセックスレス。

私も勘違いしていた一人。私が勘違いしていたことは、女性という同じ体を持つ二人なら男女のカップルより体への理解がある、セックスレスになりにくいのでは?ということ。

「レズビアンカップルにもセックスレスは多いです。むしろ女性同士のためか恋人の関係から家族になるスピードが早いので、ものすごいスピードでセックスレスになることもあります。カップルになると一日中くっついて外出もせず二人の世界に引きこもることも多いので、二人の密度が濃い分、一気にセックスレスになるのかもしれません。

ただ、セックスレスだからってセックスを求めて浮気をしようとは思わないですね。身体的にも絶対にセックスをしたいという欲がないので無理やりしようとは思わないです。人によって違いますがハグやキスで満足できることも多いです。そういう意味では精神的なつながりで満足できているんだと思います。」

とはいえ、同じ体を持っている二人ならお互いの体のことや気持ちいいポイントも理解しあえているのでは。

「自慰行為をしている子なら相手が感じるポイントもわかるかもしれません。でも性行為や自慰行為すらしたことがない、女性の体が全くわからない人もいますよ。タチ(レズビアンカップルにおいて攻める立場の人)の友達同士で集まって女性の体について互いに相談したこともありました。『あのぷっくり膨らんでいるの何!?』『奥の方にあるあのドームみたいなやつは何?』って(笑)

一緒に調べたりもしました。ストレートだった女性がレズビアンになった場合は女性の体を知り尽くしているかもしれませんが、男性経験が浅い、根っからのレズビアンでタチ側だとわからないことも多い。男性と同じで最初は未知の世界ですよ。」

「ただセックスにおいて射精がないので、男性の射精が基準となるような出したら終わりのセックスではありません。相手が逝くか、体力が続くまでセックスをします。攻めと受けの両方の立場を好むリバの場合は相手が逝ったらそこでバトンタッチ。そういう意味ではお互いにオーガズムは感じ合いやすいかもしれません。」

レズビアンカップルってそんなに耽美じゃないよ。

レズビアンはタチ(攻める側)やネコ(受ける側)、リバ(攻め受け両方)など、それぞれの好みによって立場が異なりますが、今はリバが主流だといいます。一昔前は男女の役割のように、きっちりタチとネコに別れていたそう。男性のようにタチが車道側を歩き、食事代を払っていた人もいたとか。

「タチは男らしくすることが良いとされていたんですよね。でも今は女性同士で割り勘。外見も以前は男性らしさが好まれていましたが、今はフェミニンな人が多いです。一見しただけではレズビアンかどうかはわからないと思います。

世間が変わってきているのも感じます。十数年前、私がビアンだと自覚したころは、まだ世間的に女性は男性と付き合っていることが当たり前でした。その為カムフラージュで無理して男性と付き合うレズビアンの子も多かった。でも、今の若い世代は異性と付き合わない子も多い。だからビアンでも過ごしやすくなっていると思います。」

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LGBTに関するニュースも増え理解が深まっていると感じる一方で、レズビアンカップルの描かれ方には違和感を感じるといいます。

「映画やコミックで描かれるレズビアンの世界は、『ずっと友達でいようね』と結ばれない純潔な二人を描くか、妙に耽美な関係になるか。普通の男女のようには描かれない。共感できる作品は海外ドラマの『Lの世界』くらい。私たちの日常では、『ほら、あの子誘えよ』みたいな会話ももちろんありますし、ビアンバーやクラブイベントに参加したり、合コンやマッチングサイトを活用している人もいます。」

手が震えた。そして自分が普通になれた。

そしてインターネットによる情報収集は山口さんの人生を大きく変えたそう。

伊豆半島に生まれ、中学時代に自身がレズビアンだと気づいた彼女。当時はインターネットも普及しておらず、こんなの自分だけじゃないかと誰にも言えなかった。周囲には嘘をつくしかない。当時は思春期で狭い視野しかなく、気づけば自分自身を気持ち悪いと感じるように。そこからは自己否定の日々だった。

そんな彼女が自己否定を打開した方法は人に伝えること。

「最初は本当に緊張して手も震えていました。でも伝えた相手がポジティブに受け取ってくれてすごく救われました。自己肯定感は相手に話を聞いてもらえることで高まります。LGBTのニュースもそう。記事を見ることで私は何もおかしくないと気づけます。」

彼女が学生だった頃はLGBTに関する情報は少なかった。でも静岡を出て京都の大学に進んだ際に、インターネットで検索してレズビアンが集まるビアンバーに足を踏み入れます。

「京都に出るタイミングで新しい世界に行くと決めていました。ネットで検索して初めてビアンバーの扉を開けたとき、世界が変わった気がしたんです。それまでの世界は私が異常な世界。でもその扉1枚を越えたら、私が普通な世界が広がっていました。あの時の気持ちは今でも忘れられません。」

「今は周りに同様の経験をした人たちがいます。彼女たちに聞いても自然に打ち明けられた人はほとんどいません。みんな自分を信じられず、一度男性と付き合って体の関係をもってみたり、自分自身を認めるまでに試行錯誤しています。

これから学校教育やメディアでLGBTに関する情報が増えていくことで、LGBTだと自覚した若い子が私たちのように悩まなくなれば嬉しいです。『あ、私もこれかも』と自分をフラットに見れるようになれば自己否定で悩む子も少なくなると思います。」

ドキュメンタリーの感動は5分しか続かない。

そして、山口さん自身もレズビアンとしてもっと情報を発信していきたいといいます。

「レインボープライドやニュースも大事ですが、私ができる草の根活動をしていきたいです。ドキュメンタリーやニュースでLGBTの話を見て感動してもらえても、その気持ちは5分しか続かない。一番LGBTの理解が深まるタイミングは信頼している人からカミングアウトされた時じゃないでしょうか。だから、私は私を信頼してくれている人にカミングアウトをすることで『なんだレズビアンって自分と変わんないじゃん』って思ってもらえたらいい。

私が知人にカミングアウトをする。そして、もしその知人が別の誰かにカミングアウトされたら、友達にもレズビアンいるよってその人に伝えるかもしれない。そうしたらカミングアウトした人も少し楽になるかもしれない。とても小さいことだけど、カミングアウトの草の根活動をしていきたい。」

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最後に山口さんはこう教えてくれました。

「だから、どんどん聞いてほしい。聞き手からすれば失礼なことを言ってしまったらと躊躇するかもしれないけれど、それはお互い様です。私も立場が違う人に対して失礼なことを言うかもしれない。だから、聞くことを恐れないでほしい。興味本位だとしても少しでも関心持ってもらえることが私は嬉しいです。」