生理を我慢しない。日本女性が作った月経カップが教えてくれること

売り上げが伸びている月経カップ。「スクーンカップ」開発者である浅井さんにお話を聞きました。
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第三の生理用品「月経カップ」の売り上げが日本でも急激に伸びているそうです。

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とってもカラフルな月経カップ「スクーンカップ」

「欧米やヨーロッパ、南アメリカではもう当たり前になっている月経カップですが、日本でも情報感度の高い人たちを中心に急激に広まってきています。日本、シンガポール、マレーシア、韓国などアジア諸国でも伸び率が顕著です。」

そう語るのは、月経カップ「スクーンカップ」を製造するスクーンジャパン代表浅井さとこさん。

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「スクーンカップ」は外科手術にも使われる医療グレードのシリコン素材のカップ型商品。タンポン同様に膣内に挿入することで、カップの中に経血を溜めることができます。

シリコン素材でできているため長年使用できるほか、約12時間交換せずにいられるのでナプキンを頻繁に替えるような手間がない、経血が空気に触れないため生理特有の匂いがしないといった特徴があります。

私も月経カップを2年ほど前から使用していますが、欧米においては50年以上の歴史があるそう。それにしても、アメリカ製の「スクーンカップ」が日本人女性によって開発された商品だとは知りませんでした。

今回は「スクーンカップ」の生みの親である浅井さんに月経カップに込めた想いを聞きました。

浅井さんは25年前に渡米し、ニューヨーク大学でMBAを取得。コンサルティング会社に勤めた後、2002年にニューヨークでオーガニックコットンのベビー服ブランド「スクーン」を立ち上げました。スクーンの商品は38カ国2,800店舗に輸出されています。その後、同ブランドでオーガニックコットンの布ナプキンを発売。

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カラフルで可愛い布ナプキン「Sckoon Organic Pads」(1,610円〜形状により異なる)

「当時オーガニックコットンの布ナプキンもあるにはありましたが、可愛い布ナプキンがなかったので体に優しい染料を使い、カラフルな布ナプキンを作りました。みんなは売れないと言っていましたが、試しに2000枚作ったら3日で完売しました。」

その後、アフリカの少女たちに布ナプキンを寄付するプロジェクトに参加し月経カップの存在を知ったといいます。

「生理の煩わしさがなくなる」と感じた彼女は月経カップを数種類購入し使い始めてみることに。しかし便利ではあるもののつけ心地や手入れに不満を感じ、もっと使いやすい月経カップを作ろうと決意したそうです。そして日本人を含めた数百人のモニターにヒアリングをしながら試作品の改良を重ね、2013年に「スクーンカップ」の販売を開始しました。

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スクーンカップ」(5,370円)商品にはオーガニックコットンのポーチがついてくる。

浅井さんが試した月経カップは底面についているカップを取り出しやすくするための棒(ステム)が硬く、体に当たって痛いと感じたり、月経カップの空気穴に血液がつまり手入れが大変だと感じたそう。

「スクーンカップは柔らかい医療用シリコンを使い、ステムが体に沿って曲がるようにしました。空気穴は金型の段階から開けることで壁面に沿った滑らかな穴になるため目詰まりしにくくなっています。」

体の中に入れる商品ということもあり安全性を第一に考え2012年には毒素性など様々なバイオテストを経てアメリカの薬事法をクリア。2016年には、約1年をかけて日本で医薬品医療機器等法(旧薬事法)を月経カップとしては初めてクリアしたそうです。

それにしてもここ数年でなぜ急激に売り上げが伸びているのでしょうか?

「口コミの影響が大きいです。月経カップは口コミに乗りやすい商材です。ナプキンやタンポンが昔から存在しているため、月経カップで快適な生活が送れれば、『まだそれ使ってるの?こんなに便利なものがあるよ』とつい友達に教えたくなる。あとは性に関してオープンに発信できるようになってきたことも関係していると思います。」

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米国ではティーンネイジャーから使うほど普及しているという月経カップ。日本でも販売数が増えているとはいえ、まだまだ体の中にモノを入れることへの抵抗感や経血を見ることへの抵抗感も多いようにも感じます。

「むしろ月経カップが体を知るきっかけになればいいなと思います。そもそも経血は汚いものじゃない。むしろ自身の経血量や毎月の月経をきちんと観察することは健康チェックにもつながります。日々頑張っている自分の体をちゃんと見つめ直すことで、自分のことも大切に思えるようになるんじゃないかと思います。」

スクーンカップは売上金の一部を乳がんサポート団体へ寄付しています。それは「女性をはじめとして個人の意識を応援する活動」のためだといいます。スクーンカップでは、月経カップを「すべての女性へ」とは言わず「すべての生理ある人へ」としています。

「生理は女性だけに起きるものではないです。トランスジェンダーの方もいます。彼らからすればトイレにナプキンを持っていくだけでも大変です。そういった人たちにも月経カップで快適に過ごしてもらいたい。

個人が自分の生き方を選択するために、それに合わせて製品も選んでもらいたい。自分自身で人生を作り自分の体をもっと愛して大切にしてほしい。」

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 スクーンカップのメッセージ画像。「人生に一時停止ボタンはない。あなたの人生を歩み続けて」

小さな決心の積み重ねが人生を作る。まずは自分のために。

25年以上米国に暮らす浅井さんから見ると日本女性はどのように見えているのでしょうか?

「日本人は不自由なことに対して本当に我慢しますよね。我慢が美徳とされている部分もあるからでしょうか。アメリカでは解決方法があるならそれをすべきであって我慢すべきではないという考えです。日本には同調圧力のプレッシャーがありますよね。」

「生理用品を選ぶこと一つにしても妥協しないでほしい。自分にとって何が快適なのかを考え、自分がいいと思うことを選択する。その小さな決心の積み重ねが生き方を作っていきます。

どうしても日本の女性は自分の事より周りの事を考える人が多い。もちろん独りよがりじゃだめだけど、独りよがりじゃなさすぎるのも問題。自分が快適じゃないと他の人をいい気分になんてしてあげれません。だから、まずは自分がいい気分になることを考えて。自分が心地よくなれる選択肢を選んで生きて欲しいです。」

自分の生活がどうあれば自分が幸せに感じるか。そのための選択肢を知り自分で選びとる。当たり前のことだけど、なかなかできない人も多いのでは。私たちの生活の一部である「生理」もどうすれば快適に過ごせるのか、自分のライフスタイルにあっている生理用品はどれなのか。改めて考えてみてもいいのかもしれません。

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